年間200回を超す演奏会を支える、いずみホールステージマネージャー・小味渕 彦之が、日々出会う音楽の様々な風景を綴ります。

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第84回
「11年目に入った、いずみシンフォニエッタ大阪」


  7月15日に「いずみシンフォニエッタ大阪 第27回定期演奏会」を無事に終えることができました。「デビューコンサート」として最初の演奏会を開いたのが2000年7月8日のことでしたから、ちょうど11年目に突入です。
  第27回定期演奏会は「スピリチュアルな響き」というテーマをもうけて、神話や宗教を題材にした作品でプログラムが編まれました。まず最初は川島素晴の《牧神幻想》です。「ドビュッシー、ラヴェルが描く牧神達の午後」という副題の通り、ドビュッシーの名曲《牧神の午後への前奏曲》のアレンジを核として、同じドビュッシーの《シランクス》と、ラヴェルの《ダフニスとクロエ》も顔を出します。3日間のリハーサルで指揮者の飯森範親が、「もっと音色の変化を!」と何度も叫んでいました。いかがお聴きいただけましたでしょうか。2曲目は、メシアンの《天上の都市の色彩》です。いずみシンフォニエッタでメシアンを取り上げたのは2007年に演奏した《異国の鳥たち》に続いて2曲目ですが、この2曲以外には編成の問題で当団では演奏出来る作品がありません。それでも、今回演奏した《天上の都市の色彩》には、トランペットが4人、トロンボーンも4人、パーカッションは6人など、いつもの編成以上に演奏者が必要となり、若手奏者が多数起用されました。これがかなりの難曲で、通常の3日間の練習以外に、金管を除いたピアノ、クラリネット、打楽器だけの分奏の時間をとった程です。「他のメシアンの作品とは全く違う」という声もあり、各メンバーも相当苦労したようですが、3日間のリハーサルの間でも、劇的に響きの見通しが変化するのを感じました。
  休憩を挟んで3曲目がクセナキスの《フレグラ》です。ギリシャ神話に登場する地名が題名となっていて、そこで起こった戦いがテーマとなっています。まさに演奏の現場は戦いそのもの。というのも、楽譜に楽器の配置が指定されているのですが、下手から一列にフルート、ヴァイオリン、ホルン、コントラバス、オーボエ、ヴィオラ、トロンボーン、クラリネット、チェロ、トランペット、ファゴットと、一見まったくの無秩序な順番なのです。ところがリハーサルを重ねると、「これでなきゃ!」と思わせる響きに昇華するからあなどれません。「この順番は絶対に憶えられへんわ」と豪語(?)していた私ですが、今となっては、何も見ずにスラスラとそらんじられるのに自分でも驚いています。そして、最後の4曲目は当団音楽監督、西村朗の《虹の体》です。西村作品は創設以来相当数取り上げてきているだけに、いずみシンフォニエッタ大阪にとっては十八番と言ってもよいでしょう。オーケストラの個性が一番色濃く写し出されるように思います。
  「ホールのステージマネージャー」は私にとって日常でも、「オーケストラのステージマネージャー」は私にとっては年に数度の非日常です。10年やっても本番前は緊張がこみ上げてきます。いずみシンフォニエッタ大阪が立ち上がった時、二十代だった私も、今回の定期演奏会の翌日に四十代に突入しました。まだまだ「ペーペー」のつもりでしたが、若手とは言い難い年齢に差し掛かってきたようです。「ペーペー会」という、大阪を中心としたクラシック音楽関係の現場や事務方の裏方スタッフの飲み会があります。この会の歴史は20年以上あって、今となっては「ペーペー」ばかりがメンバーではなくなってしまいました。20年前の「ペーペー」は、もはや「ペーペー」ではないのです。同じように「いずみシンフォニエッタ大阪」もそろそろ「ペーペー」の域を脱して、次の一歩に差し掛かろうとしているのではないでしょうか。今からが正念場です。